ウィリアム・ジェイムズはそのころ,マイヤーズのような考えのほうが,科学的心理学の専門家が提唱する意見よりも興味深い——少なくとも独創的である——と考えていた。その不満をハーヴァードの学長チャールズ・ウィリアム・エリオットへの手紙にぶちまけ,心理学は若い科学のくせに,退屈で,気がめいるほど新味のない学問分野だと酷評している。
彼はウィスコンシン大学のジョーゼフ・ジャストロウを例にあげた。ジャストロウは心霊研究に一家言あり,すぐれた実験も行っているものの,「狭量な知性の持ち主で……不愉快なほど偏屈」だ。コーネル大学のエドワード・ティチナーは,いまのところ自分と喧嘩してはいないが,考えに独創性がないし,「オックスフォード出身にもかかわらず,科学的にも文学的にもすこぶる野蛮で,すぐに喧嘩腰に」なる。イェール大学でいちばんと言われる心理学者は浅薄だし,シカゴ大学には有望な心理学者がひとりいるものの,若すぎてこれといった業績がない。
コロンビア大学のジェイムズ・マキーン・キャッテルについては,人間の知能テストを開発したその業績をジェイムズも認めていた。だが,心霊研究に対するキャッテルの偏狭ぶりには失望した。とりわけ,心霊研究を支持していることをキャッテルに公然と非難されたときは。キャッテルはSPRの活動を,迷信の闇におおわれて見通しのきかない泥沼にたとえていた。
デボラ・ブラム 鈴木 恵(訳) (2010). 幽霊を捕まえようとした科学者たち 文藝春秋 pp.325-326
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