ところで,私たちは真面目な心霊主義者だったのか?
そのとおり——すくなくとも半分程度は。じきにわかったことだが,このイカサマ商売では,霊媒は2種類に分かれる。「眠っているタイプ」と「目ざめているタイプ」である。
「眠っているタイプ」は,素直に霊を信じている人間たちで,感じのいい小柄な老婦人であることが多い(ただし,心霊主義に関わる老婦人がみんな感じがいいわけではない)。このタイプは自分が霊能者で,「霊界からの波動(ヴァイブレイション)」を感じとれると本気で思っている。このタイプは,悪意のかけらもない物腰が業界のイメージアップになるので,業界周辺をうろつくことを許されている。しかし,「眠っているタイプ」がイカサマ商売の仲間にくわえてもらえることはない。
それに対して,「目ざめているタイプ」の霊媒は,自分たちがイカサマ師であることを知っていて,それを認めている者たちだ——すくなくとも,同業者の秘密サークルのなかでは。
ラウールとわたしは,仕事をはじめるにあたって,自分たちを「眠っているタイプ」と「目ざめているタイプ」のあいだのどこかに位置づけるべきだった。しかし実際には,わたしたちはこの業界でいう「自分たちだけで目ざめているタイプ」だった。これはつまり,霊媒のなかには完全な偽物もいることは知っている——ただし,どれだけの数が偽物なのかは知らなかった——が,偽物は善意でやっているのであって,誰にも害をおよぼしていないと思っているという意味だ。もしそれで信仰が強まるのなら,それほど悪いものでもあるまい?
M.ラマー・キーン 皆神龍太郎(監修) 村上和久(訳) (2001). サイキック・マフィア 太田出版 pp.28
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