ときにはプロのゴーストハンターである超心理学者との知恵くらべも楽しいものだったろう。わたしたちが自称心理学者——その肩書きがどのくらい正確かは怪しいものだ——と対決した唯一の体験は,1人の若者が教会にやってきて,自分はESPの権威であるデューク大学のJ・B・ライン博士と協力している者だと名乗ったときにはじまった。その若者はわたしたちのトランペット交霊会についての報告に興味をいだいたと話,トランペットに特殊な粉をつけた状態で実験をさせてくれないかと提案してきた(もちろん,わたしたちが自分でトランペットを操作していれば,指にはっきりとした証拠が残るという寸法だ)。
まずわたしたちが最初にやったことは,ライン博士と連絡を取ることだった。すると,博士は自称協力者が名乗った名前にまったく心当たりがないことが判明した。しかし,ラウールとわたしは,科学者気取りの若造をからかうのもおもしろいかもしれないと判断した。わたしたちは「実験」交霊会を行なうことに同意した。
交霊会がはじまるまえに,この和解調査者は,関心するくらいの熱意をこめて,徹底的に交霊室を調べまわし,室内には彼とわたししかいないこと,トランペットは1つしかないことを納得した。それから,トランペットに粉をふりかけはじめた。やがて,照明が消された。
すぐにトランペットがいつもの旋回をはじめ,霊の声が聞こえてきた。若い調査者がショックと戸惑いを見せたのは,霊たちが彼の嘘をちゃんと見抜いているぞといったときだった——彼がライン博士と協力したことはいまも昔も一度もないことを。それから霊たちは,この「実験」の結果は心霊主義が正しいことを実証するだろうと保証した。
明かりがついたあとで,駆け出しの超心理学者はトランペットとわたしの手を慎重に調べた。トランペットについた粉はまったく乱れていなかったし,指にも汚れはついていなかった。
若者は震えあがっていた。自分がじつはなにかの高等な力を相手に無謀なことをしてしまったのではないかと恐れているらしかった。
わたしはどうやってトリックを実行したのか?
たいしたことではない。わたしはラウールやほかの共犯者の助けなしに,1人でやってのけた。わたしに必要だったのは,粉をふったトランペット以外のもう1つのトランペット,またはその代用になるものだった。そこで,わたしは交霊室に入るまえに,柔らかい大きな厚紙を片足のまわりに巻きつけ,靴下のゴムに突っこんで固定した。
そのあと,交霊室が暗くなってから,厚紙で即席のメガホンを作ったのである。
もしかしたら,あの熱心な若い調査者は,自分の実験の成功についてちゃんとした超心理学雑誌に専門的なレポートを書いているかもしれない。
M.ラマー・キーン 皆神龍太郎(監修) 村上和久(訳) (2001). サイキック・マフィア 太田出版 pp.132-133
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