わたしは打ちのめされた。人々に嘘を信じこませるのがいかに簡単かは知っていたが,同じ人々が,嘘をつきつけられたとき,真実よりも嘘を選ぶとは予想していなかった。
評議会のメンバーの1人で,教会に加わるためにわざわざオハイオ州から引っ越してきて,金や資産をおしみなく寄付していたジョージ・マザーンは,ラウールに「きみは自分がわたしをだましていたというつもりかね?」とたずね,その答を得た。「そのとおりです,ジョージ」しかし,このあとも彼はラウールの隣の席に座りつづけ,いまでもなお熱心に心霊主義を信じている。
狂信者症候群は,科学的に調査する価値がある。あらゆる道理を越えて,人間に信じがたいことを信じさせるものはいったいなにか?ほかの面ではまったく正気の人間が,幻想やペテンに夢中になるがあまり,真実が白日のもとにさらされたあともなお,それにしがみつこうとするのはなぜか——しかも,あんなに頑固に?
狂信者症候群は,偽の霊媒にとって最大の味方である。いくら論理をつくしたところで,嘘とわかっていながら信じる気持ちを打ち砕くことはできない。
M.ラマー・キーン 皆神龍太郎(監修) 村上和久(訳) (2001). サイキック・マフィア 太田出版 pp.191
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