気候変動に原因があると考える人々は,1万3000年前——北米の多くの大型動物が絶滅した時代——,この大陸は氷河期を終えて次第に暖かくなり,乾燥し,大陸全体で植物の構成が変わったためにそれらは絶滅した,と説明する。しかし,人類が犯人だと見ている人々からすれば,絶滅した動物の多くは氷河期をすでに22回もかいくぐって生き延びており,最後の氷河期よりはるかに過酷な時代もくぐり抜けてきたという事実の方が,より真実を語っていた。
正体がなんであれ,殺し屋は北米の大型動物を一掃するとすぐ南米に渡り,そこでも大型動物の80パーセントを消し去った。奇妙にも,アメリカの大量殺戮のおよそ4万年前,同様の黒い影がオーストラリアを猛攻したらしく,そこでも大型有袋類動物や,飛べない巨大な鳥や,体長5メートルのトカゲが消えた。やはり人類が現れた直後のできごとで,しかもこの大陸に氷河は見当たらなかった。
ウィリアム・ソウルゼンバーグ 野中香方子(訳) (2010). 捕食者なき世界 文藝春秋 pp.242-243
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