ヒューリスティックのなかで,臨床家が経験から学ぶことを困難にしている原因に最も関連が深いものは,利用可能性ヒューリスティックである。利用可能性ヒューリスティックは判断の誤りにおける記憶の役割を説明してくれる。臨床家が情報を思い出したり誤って思い出したりするために,臨床家が経験から学ぶうえで問題が発生することがある。ケースやクライエントについてすべて詳細に記憶しておくことが困難であったり,不可能ですらあるとすれば,臨床家は,しばしばそれぞれのケースについて選別された情報だけを思い出すことになる。しかしながら,そのようにして思い出された情報は,そのケースを適切に説明するものではないかもしれないし,またそのケースの主要な特徴とは無関係のものかもしれない。
S.O.リリエンフェルド,S.J.リン,J.M.ロー 厳島行雄・横田正夫・齋藤雅英(訳) (2007). 臨床心理学における科学と疑似科学 北大路書房 pp.25-26
(Lilienfeld, S. O., Lynn, S. J., & Lohr, J. M. (Eds.) (2003). Science and Pseudoscience in Clinical Psychology. New York: The Guilford Press.)
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