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I'm Standing on the Shoulders of Giants.

読んだ本から個人的に惹かれた部分を抜き出します。心理学およびその周辺領域を中心としています。 このBlogの主な目的は,自分の勉強と,出典情報付きの情報をネット上に残すことにあります。書誌情報が示されていますので,気になった一節が見つかったら,ぜひ出典元となった書籍をお読みください。

   

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心理療法のメタ分析

 スミスら(1980)は475編にもわたる膨大な心理療法成果研究を展望するメタ分析を行なった。そこでは1,766個にわたる効果量が計算され,数千の一覧表が作られ,データの要約が作られた。他の調査と違って,彼らの研究では効果量はすべて公表された研究から得たものに基づいていた。効果量についてのさまざまな分類図式と統計分析は,心理療法効能に関する多くの特定の問題にかかわるデータを供給することとなった。
 その結果,次のようないくつかの重要な結論が引き出された。

1.一般的には,さまざまな形式の心理療法が有効であるとみなせる。平均効果量は.85であった。このことは,心理療法を受けているクライエントが,心理療法を受けていない者の80%よりも改善したことを意味する。もしプラセボ治療と特定できないカウンセリング技法を除くと,効果量は.93に上昇する。心理療法におけるこのような効果は,医学と教育における高額で長期間の介入の効果に匹敵する。
2.理論的オリエンテーション(たとえば精神分析的心理療法,学習理論に基づく心理療法,認知論的心理療法,来談者中心療法)が異なっていても,モダリティ(言葉,行動,あるいは表現)が異なっていても,改善の程度には違いがなく,どのような改善がみられるかということでも違いがない。効果量の単純な無統制比較では,催眠療法,系統的脱感作,認知療法,認知行動療法が最も効力があることを示唆している。しかしこの優位は,クライエントのタイプと効果測定のタイプを考慮に入れた統制比較を行うと消失する。うつ病や単一恐怖といったような障害を持ったクライエントが治療対象となると,オリエンテーションやモダリティにかかわらず,心理療法が最も効果を発揮した。
3.短期介入と長期介入,個人療法と集団療法,そして熟練心理療法士と未熟心理療法士のいずれかの対比においても,類似した効果量が得られた。
4.次に述べる上記の結論についての信頼性の程度をいさあか低くする。すなわち,心理療法の効果は,一般的には,2年後には低くなってしまう。平均効果量は.50にまで落ち込み,何と数パーセント(約9%)の心理療法では効果が現実的にはネガティブになる。

S.O.リリエンフェルド,S.J.リン,J.M.ロー 厳島行雄・横田正夫・齋藤雅英(訳) (2007). 臨床心理学における科学と疑似科学 北大路書房 pp.131-132
(Lilienfeld, S. O., Lynn, S. J., & Lohr, J. M. (Eds.) (2003). Science and Pseudoscience in Clinical Psychology. New York: The Guilford Press.)
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