ディブローイ(DuBreuil et al., 1998)は,スパノスら(1999)の研究を多くの重要な点で発展させた。研究者は,参加者に誕生して2日めの記憶(乳児群)や幼稚園入園の初日の記憶(幼稚園群)を植え付けさせるために,偽の人格解釈の方法と催眠を伴わない年齢退行を用いた。大学生は称するところの性格検査を受け,その得点に基づいて全国規模のプログラムに参加したと告げられた。そのプログラムは,赤や緑色で動く自動車を手段として用いることで,性格と認知能力の発達を高めるために計画されたものと伝えられた。そして乳児群にはこの強化が誕生してすぐの病院で行なわれ,幼稚園群には,自動車が幼稚園の教室に置かれていたと伝えられた。最後に,参加者には,「記憶にはビデオテープのようなはたらきがあり」,アクセスできない記憶もアクセス可能な記憶検索技法(たとえば覚醒状態での年齢退行)でアクセスできるという,誤った記憶を与えた。
乳幼児条件の20人と幼稚園条件の16人の参加者は,それぞれの指定された年齢まで催眠を用いずに退行してもらい,その年齢の自分たちを視覚化するように暗示を受けた。幼稚園群の参加者全員と乳児群の90%の参加者が,暗示によって指定された時期と一致する経験を報告し,幼稚園群の25%の参加者と乳児群の50%の参加者がターゲットの記憶を報告した。幼稚園群の全参加者は自分たちの記憶は実際の出来事に一致していると信じていると報告している。一方乳児群では,33%の参加者が記憶は事実であると信じており,50%は記憶が不確かで,残り17%は記憶が事実であるとは思わないと報告している。最後に,予備調査の質問紙から,特別な技法により記憶を回復することができると信じている参加者は暗示された記憶をより多く報告していることがわかった。
S.O.リリエンフェルド,S.J.リン,J.M.ロー 厳島行雄・横田正夫・齋藤雅英(訳) (2007). 臨床心理学における科学と疑似科学 北大路書房 pp.191-192
(Lilienfeld, S. O., Lynn, S. J., & Lohr, J. M. (Eds.) (2003). Science and Pseudoscience in Clinical Psychology. New York: The Guilford Press.)
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