現代の世界は一見それほど迷信深くないように思えるが,じつは,魔法かと思うようなことが起こりやすい世界でもある。世の中は,あわただしくて困惑することが多く,その傾向はますます色濃くなっている。過去100年に起こったいくつかの大きな技術革命は,どれも人間が経験することの速度と範囲を大きく変えた。今では膨大な数の人があちこちに移動し,いっせいに情報を受け取り,広範囲にコンピュータを利用できるようになった。そのうえ,インターネットという疲れを知らない情報噴出機まで現れたのだ。
情報が膨大にあれば,偶然の一致が起こる確率は大きくなる。統計学者の使う「大数の法則」によれば,サンプルが多ければ,まったく起こりそうもないことも起こる可能性が出てくるという。つまり,外国に行ったりインターネットに接続したりするたびに経験するものがサンプルとなり,膨大な数に増えていく。その中に関連性を見つけると,「なんて小さな世界なんだ!」と私たちは驚きの声をあげる。はっきりしているのは,インターネットの情報網が広がれば広がるほど,世界は小さくなるということだ。偶然の一致に遭遇する準備は整っているのである。
マーティン・プリマー,ブライアン・キング 有沢善樹(訳) (2004). 本当にあった嘘のような話:「偶然の一致」のミステリーを探る アスペクト pp.39-40
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