「クラップ(糞)」という語の語源については,学者同士でも酒場のうんちく好き同士でも,嫌というほど長い間,激論を闘わせてきた。そろそろはっきりさせたほうがいいだろう。
「クラップ」という語はトマス・クラッパーの名前から生まれた,というのが通説である。クラッパーは19世紀のイギリスで大成功した便器業者で,水洗トイレを発明したのも彼だと言われている。「クラップ」とクラッパーとの関連は,純然たる偶然にすぎない。
「クラップ」は,中期英語のcrappeまたはchaffに由来するらしい(オランダ語のcrappenとも関連があり,そこから細分化した可能性もある)。「クラップ」が,他の望ましくない残留物を指すのに使われるようになったのは,ここからだ。
トマス・クラッパーが生まれる1836年にはすでに,この単語が定着していた。「クラップ」が初めて俗語辞典に登場したのは1846年で,彼はまだ10歳だ。いくら有能だといっても,トイレ業界の伝説的人物になるには幼すぎる。
マーティン・プリマー,ブライアン・キング 有沢善樹(訳) (2004). 本当にあった嘘のような話:「偶然の一致」のミステリーを探る アスペクト pp.219
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