忍者ブログ

I'm Standing on the Shoulders of Giants.

読んだ本から個人的に惹かれた部分を抜き出します。心理学およびその周辺領域を中心としています。 このBlogの主な目的は,自分の勉強と,出典情報付きの情報をネット上に残すことにあります。書誌情報が示されていますので,気になった一節が見つかったら,ぜひ出典元となった書籍をお読みください。

   

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

計算!

 私には,その感覚がよくわかった。ある催眠療法の専門家から退行催眠をかけてもらったとき,普段の状態とまったく変わらなかったからである。地下室の階段を降りて,前世の扉を開ける暗示をかけられてゆくと,たしかにある映像が浮かんできた。といっても,それはセラピストに気を使って記憶と想像力を駆使した結果で,自然に浮かび上がったわけではなかった。
 「あなたは暗示にかかりやすい」
 と,セラピストが満足そうに誘導してくれたので,私は,仕事熱心な彼に向かって「催眠に入っていない」とは言い出せなかったのである。そのため,過去に遡ってゆく暗示をかけられて,質問を受けるたびに苦労した。
 「今の年号は?将軍は誰ですか?」
 とセラピストから質問されると,日本史の口頭試問を受けるような気分に陥っていた。まさか図書館に行って調べてくると言うわけにもいかず,困ってしまった。まるでクイズ番組に出演して,答えられずに恥をかいているような気分だった。私は,一代前の前世が死ぬ場面のことを問われたとき,年号や年齢に関して致命的な計算ミスを犯した。私の前世だったはずの人物は,何と私が中学生まで生きていることになってしまったのである。


福本博文 (2001). ワンダーゾーン 文藝春秋 pp.161
PR

TRACKBACK

Trackback URL:

bitFlyer ビットコインを始めるなら安心・安全な取引所で

Copyright ©  -- I'm Standing on the Shoulders of Giants. --  All Rights Reserved
Design by CriCri / Photo by Geralt / powered by NINJA TOOLS / 忍者ブログ / [PR]