牧野は怒りが収まらない様子で,苦々しく言った。液晶のない昔ながらのパチンコ台を愛する人間からすると,釘をおろそかにして,大型液晶で大当たりの予感を煽るタイプのパチンコ台は許せないのだろう。警察が管理しやすいように,コンピュータ制御で確率が変動する物がパチンコの大半を占めるようになった。牧野はこう続けた。
「きれいな言葉を使えば,『平等で公平』にはなったんです。技術介入を認めないようになりました。初めてパチンコをするビギナーでも,この道何十年のベテランでも全く差がない。いわば抽選箱のようなものです。でも,その結果はどうですか!?パチンコ人口は今や往年の半分程度です。こえは,パチンコにゲーム性を求める人が減って,パチンコをギャンブルとしてしか見ていない,お金だけのためにやる人だけが残ったからですよ」
パチンコ台には,様々なアニメや芸能人,テレビドラマとのタイアップが増えて,傍目にはメディアミックスが進んでいるように感じていた。しかし,実際にはパチンコ台からは本来のゲーム性が消えてしまい,「ギャンブルの道具」としか見ていないプレイヤーが圧倒的だというのだ。牧野の言葉はショッキングなものだった。
安藤健二 (2011). パチンコがアニメだらけになった理由 洋泉社 pp.140-141
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