フィアニス・テイラー・バーナム(1810-1891)はみずからを”ホラ吹き王子”と称し,長く華々しい生涯にはその名に恥じないホラを吹いている。今日,バーナムはいまだにその名を冠したサーカス(それにバーナムにちなんだ名前の動物クラッカー)のせいで記憶されている。だが,サーカスを創業するまえは,博物館を運営する国際的に有名な興行師だった。
初期のころは突飛な宣伝やデマを繰り広げ,風変わりな見せ物に人々をひきつけていた。その宣伝方法はしばしば信仰の中産階級の許容範囲を越えていたが,バーナムはどうにかこうにか観客を納得させることができた。娯楽を売っているのであって,詐欺ではないというのがその言い分だ。大衆にとって,バーナムはいわば愛すべきペテン師だった。
“世に馬鹿者の種は尽きまじ”はバーナムの言葉とされている。これを最初に言ったのはバーナムではないのに。
アレックス・バーザ 小林浩子(訳) (2006). ウソの歴史博物館 文藝春秋 p.85.
PR