まず間違いなくほとんどの人は,地平線に昇る(あるいは沈む)月は,頭上の月よりもはるかに大きく見えると感じる。実験の結果によると,地平線上の月は,頭上の月と比べて,2倍から3倍大きく見えるという。
この効果は,数千年前にはすでに知られていた。アリストテレスは紀元前350年ごろ,この効果について書いている。さらに,ニネヴェにあった王家の図書館から発掘された粘土板にも,月の錯覚についての記述があるが,これはアリストテレスより300年以上前に書かれたものだ[ニネヴェは紀元前8世紀〜7世紀にさかえたアッシリア帝国の首都。現在のイラクにある]。
現代の大衆文化は,この効果についていろいろな説明がされている。最もよくあるのは,次の3つの説だ。ひとつ目は,地平線上の月は,実際に観測者に近いため大きく見えるという説。ふたつ目は,地球の大気がレンズの働きをして,月を拡大するため大きく見えるという説。そして3つ目は,地平線上の月を見る場合,地平線上にある木や家などとつい比べてしまうため,大きく見えるという説だ。
例の台詞を言おうか?こうした説は間違いだ。
フィリップ・プレイト 工藤巌・熊谷玲美・斎藤隆央・寺薗淳也(訳) (2009). イケナイ宇宙学:間違いだらけの天文常識 楽工社 pp.113
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