図で表す場合,空は半球として描かれることが多い。これは文字どおり球体の半分だ。もちろん,実際にはそうではない。地球の上空に球面はない。空には限りがないのだ。しかしわれわれは,空を頭上にある球面として認識しているので,形があるように見える。半球状にある点はすべて,中心から等しい距離にある。真上にある点は天頂といい,もし空が本当に半球なら,天頂は地平線上の点から最も遠い点になる。
しかし,現実にはそうではない。私も含めた多くの人には,空は天頂付近が平らで,半球というよりはスープ皿のように見えている。信じられないだろうか?では,これを試してみてほしい。家の外に出て,空が地平線から天頂まで見渡せるような平らな場所に立ってみよう。一本の線が天頂から空を横切り,地平線に真っ直ぐのびていると想像する。腕を伸ばして,地面と天頂のちょうど中間,地平線から45度上にあると思う点を指してみよう。
次に,友達に頼んで,腕と地面のあいだの角度を測ってもらおう。保証してもいい。あなたの腕の角度は,天頂までのちょうど半分にあたる45度ではなく,30度前後になるはずだ。私はこれをたくさんの友達と一緒にやってみたが(何人かは天文学者だ),40度以上を指した人は誰もいなかった。こうなる理由は,われわれは空は平らだと考えているからだ。空が平坦なら,天頂と地平線の中間点は,空が半球の場合より低くなる。
フィリップ・プレイト 工藤巌・熊谷玲美・斎藤隆央・寺薗淳也(訳) (2009). イケナイ宇宙学:間違いだらけの天文常識 楽工社 pp.119-120
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