いろいろ書いてきたが,最後の質問をしよう。満月を見上げて,その隣に手に持った10セント硬貨を並べてみるとする。それが満月と同じ大きさに見えるには,自分からどのくらいの距離に掲げなければならないだろうか?
その答えには驚くだろう。2メートル以上離れたところなのだ!たぶん,ものすごく腕が長くなければ,自分の手でそんなに遠くに硬貨を掲げられないだろう。空の月は大きいというイメージを持っている人がいるが,実際には非常に小さい。月の直径は約0.5度だから,月を180個並べなければ,地平線から天頂まで(距離が90度)届かないのだ。
ここで言いたいことは,われわれの感覚が現実と一致しないのはよくあるということだ。たいてい,間違っているのは私たちの感覚のほうだ。
フィリップ・プレイト 工藤巌・熊谷玲美・斎藤隆央・寺薗淳也(訳) (2009). イケナイ宇宙学:間違いだらけの天文常識 楽工社 pp.124
PR