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I'm Standing on the Shoulders of Giants.

読んだ本から個人的に惹かれた部分を抜き出します。心理学およびその周辺領域を中心としています。 このBlogの主な目的は,自分の勉強と,出典情報付きの情報をネット上に残すことにあります。書誌情報が示されていますので,気になった一節が見つかったら,ぜひ出典元となった書籍をお読みください。

   

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流星から隕石へ

 流星物質が地球の大気の上層に突入すると,前面の空気を圧縮する。気体が圧縮されると温度が上がり,流星物質が秒速100キロメートルといった高速度になると,通り道の空気に強い衝撃波が発生する。圧縮された空気はきわめて高温になり,流星物質が溶けるまでになる。流星物質の前面,すなわち高温の空気にさらされている側が溶けはじめる。流星物質からはさまざまな成分が放出され,それが熱せられるととても明るい光を放つ。流星物質の表面が溶けると,空を横切る明るい物体として地上から見えることになる。流星物質は光る流星になるのだ。
 これにかんしては私自身がイケナイ宇宙学に荷担してしまった。かつて私は流星物質を熱するのは空気との摩擦だと説明してしまったのだ。これは一般的な説明で,本にも書かれテレビでも言われているが,でも間違いなのだ。実際には流星物質と空気とのあいだにはほとんど摩擦は起きない。きわめて高温の圧縮された空気は,流星物質の前の離れたところに留まるのだ。それを物理学者は「離脱衝撃波」と呼んでいる。この高温の空気は,岩石の本当の表面からかなり離れたところに留まるので,その直後には比較的ゆっくり動く空気のポケットができて,それが岩石と接触する。これは「融除(アブレーション)」と呼ばれる。流星物質から融除されて後方に流れるかけらは輝く長い筋(流星痕)となる。流星痕は何キロメートルもの長さになり,空で数分間も輝き続けることもある。
 これらの過程,空気の激しい圧縮やら流星物質の表面の加熱やら溶けた外側の部分の融除やらは,すべてが数十キロメートルの高度で発生する。運動のエネルギーは急速に発散し,流星物質は急激に減速する。流星物質が音速以下にまで減速すると,空気はもう激しく圧縮されなくなり,流星の輝きは消える。ふつうの摩擦が大きく働くようになり,時速数百キロメートルまで流星物質を減速する。これは自動車よりもそう速くはない速度だ。
 そのため平均的な流星物質が大気の残りの部分を通り抜けて,地上に到達するまでには数分間かかる。流星物質が地上に落下した場合には隕石と呼ばれる。

フィリップ・プレイト 工藤巌・熊谷玲美・斎藤隆央・寺薗淳也(訳) (2009). イケナイ宇宙学:間違いだらけの天文常識 楽工社 pp.189-190
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