これがまた流星にかんする別の誤解のもとになる。私がこれまでに見てきた映画やテレビ番組はすべて,小さな流星物質が地上に落ちて火災を発生させる。しかし現実にはそうはならない。流星物質はその生涯のほとんどを宇宙ですごし,それゆえにとても冷たいのだ。流星物質は大気を通過する短いあいだ加熱されるだけで,熱が内部に達するほど長時間加熱されはしない。とくに岩石からなっている場合だと,岩石はかなり断熱性が高いのだ。
実際もっとも高温になる部分は融除されて飛んでいってしまうし,流星物質が地上に届くまでには数分かかるので,表面の部分はさらに冷却される。その上に地表から数キロメートルの高さの冷たい空気の中を通過する。だから衝突のときあるいはその直後には,流星物質の内部の超低温が外側の部分も冷やしてしまっているのだ。だから小さな流星物質は火災を発生しないどころか,その多くは実際に発見されるときには霜で覆われている。
フィリップ・プレイト 工藤巌・熊谷玲美・斎藤隆央・寺薗淳也(訳) (2009). イケナイ宇宙学:間違いだらけの天文常識 楽工社 pp.190-191
PR