テレビのドキュメンタリー番組では,ビッグ・バンを爆発のようにアニメーションで見せるのがふつうだ。暗黒の中を球形の火の玉が広がっていく。しあkしそれは間違いだ。爆発は空間の膨張そのものなのだから,膨張する外の宇宙は存在していない。宇宙はそこにあったのだ。外側にではない。ビッグ・バンの前には時間も存在しない。北極の北はどこだろう?
拡大していく巨大の火の玉の中に住んでいるという幻想は残る。私自身それを振り払うのには苦労した。宇宙の中心の方向があって,そちらを見れば中心が見えると考えるかもしれない。問題なのは,爆発はわれわれの周り中にあることだ。われわれがその一部であり,見るところどころにもある。最大の映画館だ。
まだ混乱しているって?宇宙論の研究者でも,四次元や空間の曲率を考えると頭が痛くなることもあるんじゃないかと思う。彼らは認めないだろうが。天文学者はこう言っている。宇宙論者はしばしば誤りを犯す。しかしつねに確信を持っている。
それでもわれわれはこの広大な宇宙を理解しようとし続ける。アインシュタインがうまいことを言っている。「宇宙にかんして一番の驚くべきことは,われわれが宇宙を理解可能だということだ」。
フィリップ・プレイト 工藤巌・熊谷玲美・斎藤隆央・寺薗淳也(訳) (2009). イケナイ宇宙学:間違いだらけの天文常識 楽工社 pp.209-210
PR