アメリカの学校教育の目的は,子どもたちに勉強を教えることではない。学校は,秘密の計画経済と意図的につくられたピラミッド社会に奉仕するもので,子どもや家族のためのものではない。学校は,子どもが初めて組織化された社会を知る場所であり,概して,そうした第一印象はずっと続く。学校生活は単調で,退屈で,消費だけが唯一の慰めになる。つまり,コーラやビッグマック,最新流行のジーンズといったところに,現実の意味が見出されるのであり,それが授業の内容である。
義務教育が健全な人間形成に有害であることは明らかだ。教室での仕事は大した仕事ではなく,生徒の真の欲求を満たすものではない。それは子どもたちの経験から生じた疑問に答えるものでもなく,実生活で遭遇するどんな問題の解決にも役立たない。教室での仕事を本人の望みや経験,疑問,問題とは無関係にすることで,学校は生徒を無関心にさせようとしている。
ジョン・テイラー・ガット 高尾菜つこ(訳) (2006). バカをつくる学校:義務教育には秘密がある 成甲書房 pp.82-83
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