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I'm Standing on the Shoulders of Giants.

読んだ本から個人的に惹かれた部分を抜き出します。心理学およびその周辺領域を中心としています。 このBlogの主な目的は,自分の勉強と,出典情報付きの情報をネット上に残すことにあります。書誌情報が示されていますので,気になった一節が見つかったら,ぜひ出典元となった書籍をお読みください。

   

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アルキメデスについて

 古代における第二ポエニ戦争(紀元前218〜前201年)は,現代における第二次世界大戦になぞらえられる。この戦争は空前の大惨禍をもたらし,地中海の地政をめちゃくちゃにした。いっとき,ハンニバルがローマを征服したかに見えた時期もあったが,ローマは危機を乗りきって勝利を収め,終戦時には地中海全体をほしいままにするほど勢力を伸ばしていた。ギリシャ諸都市の自治は失われ,アルキメデスに象徴される文明はさげすまれた。第二次ポエニ戦争の大きな転換点のひとつは,シラクサの陥落だった。西地中海の中心的なギリシャ都市国家だったシラクサは,カルタゴと手を結ぶという誤った戦略をとった。長期にわたってローマ軍に包囲されたのち,紀元前212年,アルキメデスが考案し,戦闘では負けなしだった防備が,裏切りのために破られた。くわしいことは不明だが,アルキメデスはこのとき死んだ。
 実を言うと,歴史上の人物としてのアルキメデスについてわかっているのは,これがすべてだ。それでも,わかっているだけましだという点を強調したい。何しろ,古代の出来事がいつ起きたか特定できること自体,驚くべきことなのだ。古代の人はだれひとり,“アルキメデスが紀元前212年に死んだ!”などと書きとめてはいないからだ。大昔の旧暦を知るには,基本的につぎのような方法をとる。古代の資料のなかには,ありがたいことに,1年の出来事を年ごとに細かく記録した年代記がいくつかある(ローマの著述家リウィウスが記したものなどがよく知られている)。当時の暦の体系は現代と異なるが,古典作家は,ときどき天文のデータ(とくに,日食や月食)を残してくれている。ニュートン物理学を使って,こうした天文現象がいつ起こったかを計算すれば,それをもとに古代の年表を作り,現代の暦で言うといつにあたるかを導きだすことができる。このような天文データがなければ,たしかな年表などとうてい作れない。没年ひとつとってみてもわかるとおり,アルキメデスの人物像を知ることができるのは,アルキメデスに多くを負う科学があってこそなのだ。

リヴィエル・ネッツ,ウィリアム・ノエル 吉田晋治(監訳) (2008). 解読!アルキメデス写本:羊皮紙から甦った天才数学者 光文社 pp.56-57
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