料理の歴史をたどってみると,誤った伝承が入り乱れているケースがほとんど。ハンバーガーの起源についても同じだ。北アジアの騎馬民族,タタール人の料理が起源だったとする説もあるが,ハンバーガーとは一切関係がない。ドイツのハンブルグの人々[ハンバーガーの名前の由来とされる]も関係はほとんどないといっていいだろう。ハンバーガーの「発明者」とされる人は何人かいるが,それを証明するだけの確かな証拠は見つかっていない。デルモニコというレストランの1834年のメニューに「ハンバーグステーキ」が載っていたとよく言われる。でも,そのメニューはにせもの。1904年のセントルイス万国博覧会の会場でハンバーガーが売り出されたことを報じたという新聞記事もよく引き合いに出される。そのハンバーガー売が発明者というわけだ。だが,その記事の存在は確認されていない。たとえ確認されたとしても,それがアメリカのハンバーガー第1号だったとは思えない。マクドナルドの創業者をレイ・クロックとするのも間違い。イリノイ州のデスプレーンズに最初の店ができたというのも誤りだ。
アンドルー・F・スミス (2011). ハンバーガーの歴史:世界中でなぜここまで愛されたのか? ブルース・インターアクションズ pp.27
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