健康法にはさまざまあるが,大きく「民間健康法」と「正規の健康法」の二種類に分類することができる。民間健康法は,次のような特徴をもっている。民間健康法は,次のような特徴をもっている。
①簡単安易である。毎日50キロ走れとか,100日間山にこもれ,といった健康法があっても普及しないだろう。所要時間も1日5分が限度であろう(健康を切望しているといってもこの程度のものである)。
②万病に効く。画期的な健康法であればあるほど,あらゆる病気を治すものだと信じられている。「水虫からガンまで」,「夜尿症から心臓マヒまで」治る,というふれこみがあれば申し分ない。
③痛くない。せいぜいタワシでこするときの痛みが限度である。
④厚生省や科学者が認めていない。
これらの条件が満たされれば効果のほどは二の次である。確実に効果があるなら,健康法として定着するはずであるが,民間健康法はどれも定着せず,流行りすたりを繰り返しているのがその証拠である。
「正規の健康法」は,これと逆で,医学に裏づけされたものを指す。当然厚生省も認めている。したがって正規の健康法はスリルに乏しい。
たとえば「脅威の回春術」といっても,正規の健康法に従うかぎり,結局は「規則正しい生活と適度の運動とバランスのとれた栄養」というハンで押したような結論が出るだけである。われわれはそんなまどろっこしい健康法を求めているのではない。一発逆転の健康法を求めているのだ。ここに各種の民間療法がもてはやされる余地がある。
土屋賢二 (2001). 哲学者かく笑えり 講談社 pp.41-42.
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