ファストフード業は安い労働力の上に成り立っている。そこでマクドナルドをはじめとするファストフードチェーンは賃金を抑えるために故意に組合をつくらせないようにしてきた。最低賃金や給付金を引き上げようとする動きがみられると,いつも反対するように議員に働きかけた。離職率の高さも問題で,年間300%近くという店まであった。これはひとつには賃金が低いからで,パートタイムの場合,給付金や残業手当がもらえず,長く勤めても昇給しないことも離職につながっていた。マクドナルドが急成長していた1950年代,60年代には,ほかでは働き口のない若年労働者がいくらでもいた。ベビーブームの世代が成長すると,マクドナルドはこの若者たちを好んで雇った。若い子は簡単に言いくるめることができて管理しやすいからだ。やがて若者の人口が減り始めたころ,マクドナルドは従来とは異なる人たちを雇うことになった。雇用における差別を禁じる連邦法ができたこと,よい従業員を雇う必要があったことから,女性を採用し始めたのだ。アメリカにやってきてまもない移民や高齢者,マクドナルドは自動化をさらに進め,レジには仕事を簡単にこなせるタッチ画面式の機械を導入した。
アンドルー・F・スミス (2011). ハンバーガーの歴史:世界中でなぜここまで愛されたのか? ブルース・インターアクションズ pp.63
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