このように男は「たんなる見せかけ」を軽蔑する。しかし女に対しては,外見にとらわれて,内面にまでは目がとどかない。いくら内面的葛藤を抱えていても,男の本質は単純なのだ。
このことは男女の語彙の差にも現れている。女の語彙は少ない。「すてき」,「いやらしい」など,主観的感想を4段階くらいで表現するための語彙に限られている。一方,男の語彙は,さらに少なく,「許せる」と「許せない」しかない。他のことばも使いはするが,それらはすべてこの2つの単語の同義語である。
男が女を選ぶ基準も非常に単純である。女が男を選ぶときのように複雑な条件をつけたりしない。たいていは容貌と性格をもとにして選ぶが,そういっても実際は簡単である。容貌のランクは①許せる,②ただちに許せるとはいえない,の2段階しかない。性格も①許せる,のみの1段階評価である。
土屋賢二 (2001). 哲学者かく笑えり 講談社 pp.75-76.
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