ネットワークという観点に立てば,性感染症の主な危険因子は個人的属性(たとえば人種)であるという考え方から抜け出しやすくなる。事実,リスクを理解するためのもっと有効な手段は,個人の社会的ネットワークの構造に焦点を合わせることなのだ。つまり,社会経済的な位置よりも社会構造的な位置のほうが問題なのである。人びとがリスクの高い行動や低い行動をとるのは,お金,教育,肌の色などが原因だと考えるべきではない。社会的ネットワークに関する各種の研究から次のことがわかっている。人びとがリスクにさらされるかどうかは,その人がどんな人であるかより,誰と知り合いであるかで決まるのだ。つまり,ネットワークのどこにいて,周囲で何が起こっているかが問題なのである。ネットワーク構造という観点をとれば,多くの社会的プロセスに新たな光を当てることができる。
ニコラス・A・クリスタキス,ジェイムズ・H・ファウラー 鬼澤忍(訳) (2010). つながり:社会的ネットワークの驚くべき力 講談社 pp.133
(Christakis, N. A. & Fowler, J. H. (2009). Connected: The Surprising Power of Our Social Networks and How They Shape Our Lives. New York: Little, Brown and Company.)
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