だが,肥満を広げるのは模倣だけではない。人間はたがいに認識を共有するものだが,こうした認識がどれだけ食べ,どれだけ運動するかにも影響するのだ。たとえば,周囲の人を見て,その人たちの体重が増えているのに気づけば,許容できる体型について認識を改めることもある。多くの人が太りはじめると,太りすぎとは実際に何を意味するかについて期待値が再調整される。人から人へと広がるのは,社会科学者が規範と呼ぶもの,つまり,何が適切であるかに関して共有される期待値なのだ。ロックデール郡のティーンエイジャーが性的規範を(大人たちを失望させて)調整したように,何を肥満とみなすかについての人びとの考えは急速に変化している。また,社会的ネットワーク内にニッチが生じることもある。こうしたニッチで人びとが特定の規範を強化し,直接・間接につながった人びとが何かについて認識を共有しながら,たがいに影響されていると気づかない場合もある。
ニコラス・A・クリスタキス,ジェイムズ・H・ファウラー 鬼澤忍(訳) (2010). つながり:社会的ネットワークの驚くべき力 講談社 pp.144
(Christakis, N. A. & Fowler, J. H. (2009). Connected: The Surprising Power of Our Social Networks and How They Shape Our Lives. New York: Little, Brown and Company.)
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