禁煙の拡大はまた,地位の高い人がイノベーションの広がりに果たす役割を明らかにしている。フレーミングハム心臓研究のデータによれば,他人に影響を及ぼす力は教育によって増幅するようだ。つまり,人は高い教育を受けた知人が禁煙すると自分も禁煙することが多いのである。加えて,教育はイノベーションを欲する気持ちを強める。高い教育を受けた人は,そうでない人よりも仲間の禁煙行動を真似る傾向が強い。こうして皮肉にも,タバコに関して言えば,現在の禁煙の波は60年から100年前に起こったことの裏返しとなっている。つまり,当時はまず,社会的地位が比較的高いひとびとのあいだに喫煙の習慣が根づいたのだ。1930年代や40年代の広告では,医師がにこやかに笑いながらタバコを楽しみ,喫煙を勧めている。
ニコラス・A・クリスタキス,ジェイムズ・H・ファウラー 鬼澤忍(訳) (2010). つながり:社会的ネットワークの驚くべき力 講談社 pp.150
(Christakis, N. A. & Fowler, J. H. (2009). Connected: The Surprising Power of Our Social Networks and How They Shape Our Lives. New York: Little, Brown and Company.)
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