何世紀にもわたり,軍隊における戦闘部隊の規模は150人前後だった。古代ローマ群の基本単位(歩兵中隊)は120人だったし,現代の軍隊でも歩兵中隊の平均的規模は180人だ。組織されたチームとしてメンバーが力を合わせ,同胞の強み,弱み,信頼性を把握できる集団の規模の上限が,そうした人数なのだ。戦争によって特定の淘汰圧が働くのだとか,古今の部隊がこの規模に達したのは生存に最適な規模を経験的に観察したからだ,などという想像さえできる。
現代の通信技術を利用すればより大規模な編成ができそうなものだが,興味深いことに,現代でも軍隊の大きさは変わっていない。ここからわかるのは,集団の規模を決める最大の要因はコミュニケーションではないということだ。もっと大切なのは人間の心の力である。つまり,社会的関係を追跡し,1人ひとりを特定できる心の名簿を作成し,ネットワークのメンタルマップを描いて,誰と誰がつながっているか,その関係は強いか弱いか,協力的か攻撃的かといったことを探ることのできる力なのだ。
ニコラス・A・クリスタキス,ジェイムズ・H・ファウラー 鬼澤忍(訳) (2010). つながり:社会的ネットワークの驚くべき力 講談社 pp.310
(Christakis, N. A. & Fowler, J. H. (2009). Connected: The Surprising Power of Our Social Networks and How They Shape Our Lives. New York: Little, Brown and Company.)
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