こうしたサイトを通じ,妄想癖のある人びとは,心に安らぎと落ち着きをもたらす貴重な経験をする。つまり,他人に理解してもらえるという誰もが望む経験である。こうしたサイトでなら,自分の頭がおかしいのではないと安心させてくれる大勢の人に出会えるのだ。したがって,オンラインで他人とつながる能力は,社会的に有用といえるかもしれない。ごく普通の日常生活を送りながら,オンラインならではのやり方で,ある程度までサポートを受けたり人と触れ合ったりできるからだ。ところが,こうしたサポートが心理的な面では事態を悪化させかねない。「この種の信念体系に基づくものの見方は,絶えず餌が必要なサメに似ています」とイェール大学の精神科医,ラルフ・ホフマン博士は言う。「餌を与えなければ,遅かれ早かれ妄想は消えるか,自然に小さくなっていきます。重要なのは,妄想には強化の反復が必要だということです」。残念ながら,このケースではインターネットがまさにその機会を提供しているのである。
ニコラス・A・クリスタキス,ジェイムズ・H・ファウラー 鬼澤忍(訳) (2010). つながり:社会的ネットワークの驚くべき力 講談社 pp.349-350
(Christakis, N. A. & Fowler, J. H. (2009). Connected: The Surprising Power of Our Social Networks and How They Shape Our Lives. New York: Little, Brown and Company.)
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