神経心理学者ダニエル・シャクターが指摘しているように,記憶の欠落にはさまざまな種類がある。彼は7つの「記憶の過ち」,すなわち流動性,注意散漫,阻害,帰属の過ち,被暗示性,先入観,残留について詳述している。シャクターの言葉によると,最初の3つは「不作為の過ち」で,われわれがよく経験し嘆くタイプの記憶消失である流動性は「時間による記憶の希薄化や消失を指し」,注意散漫は,われわれが集中していないために,後に必要となる情報を記憶しないことによって起こり,阻害は,われわれが思い出そうとする記憶が「どこかに隠れていて,必要になった時に一生懸命思い出すと心に浮かんできそうではあるが思い出せない」ことによるフラストレーションを伴う。最後の残留は,流動性の反対である。普通は不快な,あるいは衝動的な出来事の記憶が,忘れたいと思ってもわれわれを離れない。極端な例では,「フラッシュバック」として感知され,それは時に極めて明瞭で,その人はまた元の出来事を再び経験していると感じることもある。
キャスリン・テイラー 佐藤敬(訳) (2006). 洗脳の世界——だまされないためにマインドコントロールを科学する 西村書店 pp.165
(Taylor, K. (2004). Brainwashing: The Science of Thought Control. London: Oxford University Press.)
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