洗脳(とその他の感化)に対するわれわれの感受性には,脳の状態が大きく関与している。その一部は遺伝子に依存しており,研究結果からは前頭前野が遺伝の影響を大いに受けていることが示唆されている。低い教育レベル,独断主義,ストレスなど前頭前野機能に影響する因子は,単純な二元的志向を促進する。もしニューロンを無視し,シナプスを刺激せず,新しい経験に頑固に抵抗したり,あるいは薬物(アルコールを含む),睡眠不足,激しく変化する感情,慢性のストレスによって前頭前野をいじめたりすると,次に現れるカリスマ的才能を持った人の全体主義的魔力に負けてしまう。若い人達がカルトに加わり,ファッションと有名人に取り付かれ,時に全く相応しくない役柄のスターに激しく傾倒したりすることで,どちらかと言えば無気力な年寄りを困惑させるのはそのためである。
キャスリン・テイラー 佐藤敬(訳) (2006). 洗脳の世界——だまされないためにマインドコントロールを科学する 西村書店 pp.282
(Taylor, K. (2004). Brainwashing: The Science of Thought Control. London: Oxford University Press.)
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