同様の話は,企業からも聞こえている。仕事柄,多くの人事の方と情報交換するのだが,彼らから,新人・若手に関して以前にも増して厳しい声を聞くことが多くなっているのだ。彼らが成果をあげることができないのはなぜなのか。その要因・背景を尋ねていくと,明らかな傾向がある。それは大きく3つに分けられる。
1つ目は,失敗を極度に恐れるというものだ。
正解をほしがり,失敗を嫌う。明らかな正解と分からないと,やりたがらない。多くの仕事に正解はないし,やってみないとわからないことがよくあるが,とにかく前に進んでみろといっても怖がって前に進まないのだ。負けたことも糧になるはずなのに,その想像もできないという。
失敗を全然してきていないのではないかという意見も多い。順調な時はいいが,厳しい局面を迎えると,リカバリープランが立てられない。そして,失敗すると落ち込み,負のスパイラルに陥るのだという。
2つ目は,自分の能力を棚に上げて,要求ばかりするというものだ。あれがやりたい,これがやりたい,それはやりたくないという根拠のない主張が実によく聞かれるのだという。そして,その主張・要求は,当然通らないわけだが,通らないことに強い不満を表すというのだ。
3つ目は,自分が思い描いた成長ルートから外れるとモチベーションが急落するというものだ。自分自身の成長発展を強く意識し,その道筋についても,自分なりに思い描いている。そして,そこから少しでも外れると,自分はもうだめだ,となってしまう。とても偏狭なキャリア・イメージが強く窺える。
豊田義博 (2010). 就活エリートの迷走 筑摩書房 pp.23-24
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