自身にはすでに高い能力が備わっていて,自分が望むものは得られるはずだ,という強い確信。そして,そこで成果を出していけるはずだ,という強烈な自信。「スター願望」とでも形容すべきこの思い込み。自らの努力なしに,すでに賞賛されることが予定されているかのようだ。
しかし,スター願望は,往々にして打ち砕かれる。自身の希望が叶う確率は低く,また,希望が叶ったとしても,自信のイメージしているものとの乖離は大きい。
こういう人は昔にもいた。程度の差はあっても,こうした「ワガママ」をいう人はいた。そして,自信の希望が脆くも崩れ去ったり,希望通りであっても想定していたイメージではなかったり,つまり現実に直面し,リアリティ・ショックを受けながらも,それを受け入れ,現実に適応していった。
ところが。今の新人・若手は,適応できないのだ。現実が受け入れられない。
目の前にある仕事にきちんと向き合えない。本気になって取り組めない。必然的に,成果は上がらない。その時に,彼らが決まっていうセリフがある。
「ここじゃなかったら,もっといい仕事ができるはずです!!」
悪いのは自分ではない。悪いのは意に染まぬ仕事につけた会社である,自信の適性や能力が分かっていない上司や先輩である……彼らの頭の中にあるのは,こういう思考回路だ。そう,明確な他罰意識に支配されているのだ。
豊田義博 (2010). 就活エリートの迷走 筑摩書房 pp.29-30
PR