企業の採用責任者が,あるいは就職予備校の講師が,そして当の学生たちも頻繁に使う言葉がある。「軸」という言葉だ。
「その人なりの軸が見えてくるかどうか」
「私の軸って,何だろう……」
というように使う。その人なりの思考行動特性や能力,価値観,それらが一体となったパーソナリティ(個性・人格)を指している。そして,面接とは,その人の「軸」を探り出していく場だ,と捉えられている。そのために,学生が自己PRをするために持ち出す経験を掘り下げたりしながら徹底的に聴き込むことで,「本人に自律性があるのか」「人を動かすリーダーシップを発揮してきたか」などを見極めたり,思わぬ質問を投げ掛けたりして,その人の素顔の部分に迫ったりする。徹底的に丸裸にしていくという戦術だ。その結果,いろいろ聞き出しても「軸」がよく見えない,分からない,という学生にはNGのレッテルが貼られていく。また,「軸」が見極められた人の中でも,各社の求める人物像にフィットしない学生はオミットされていく。
豊田義博 (2010). 就活エリートの迷走 筑摩書房 pp.111
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