つまり,現代の若者が生きていくうえで最も必要なもの,あるいは人間関係格差を生み出すもの,それはコミュニケーション能力なのだ。スクール・カーストを体感しながら大学生,若手社会人になっている人の話を聞いていると,スクール・カーストの上層にいる生徒とは,イケメンとか,スポーツができるという要素もあるものの,基本は「コミュ力」だという。「コミュ力」とは,コミュニケーション能力の略語だが,就活という言葉と同様に意味の変質が起きている。
彼らが口にする「コミュ力」とは,スクール・カーストを形成する人間関係格差の原点となっている。「コミュ力」とは,相手を動機づけて行動を起こしたり,異なる意見の相手と議論して1つの結論を導く,という真の対人能力ではない。その場が期待するような話を展開し,空気を読みながらその場をうまく取りなすような能力だ。そして,その能力の高い学生がカースト上位に君臨し,自信に有能感を感じてきたのである。
豊田義博 (2010). 就活エリートの迷走 筑摩書房 pp.
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