そして,もう1つ,日本の著作権の概念に著しく欠けていることに「オプトアウト」という考え方がある。このオプトアウトは,ウェブの時代には欠かせない考え方である。
たとえば,あなたがどこかのサイトの会員に登録すると,以後,そこから頻繁に広告メールが送られてくるケースがあると思う。これが,オプトアウトで,簡単に言うと「拒否しない限り同意しているとみなす」ということ。つまり,オプトアウトでは事前の了解なしでもメールが送れることになっている。
ところが,日本は「オプトイン」の国で,著作者の許諾と同じように,メールを送る前に「広告メールを送りますがいいですか?」と許可を得ないと,メールを送れないことになっている。オプトインもオプトアウトもともに拒否する権利だが,その方向性はほとんど正反対で,日米は全く逆だ。
オプトアウト方式でいけば,著作物を使用する場合,コンテンツそのものには著作者本人の許諾が必要となるが,フェアユースと絡めて,許諾の範囲,引用の範囲と判断できれば,直接著作者に当たらなくても使用できる。もちろん,著作者本人が申し出て,「やめてほしい」と言ってきたら,ガイドラインに照らして判断し直す必要がある。
日本では「許可なくやること」は大犯罪のように扱われるが,コンテンツの流通を考えたとき,オプトアウトのほうがはるかに自由が利く。また,ウェブの世界では削除は一瞬であり,削除した瞬間から権利は侵害されなくなるので,この方式がアメリカでは一般化している。
山田順 (2011). 出版大崩壊:電子書籍の罠 文藝春秋 pp.149-150
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