このことを振り返っていま思うのは,現状の電子出版でビジネスになるのは,IT側だけだということだ。コンテンツ提供側は多大な出費を覚悟して,彼らが用意したスキームに乗って走り出す。しかし,走ってみて気がつくのは,話が違うということである。
もう1つ,これまで私が会ってきたIT側の人間は,作品やそれをつくるということに関して,あまり愛情を持っていないことを,たびたび感じた。作家が作品をつくるのにどんなに苦労しているのか,あるいはジャーナリストが真実を追求することにどれだけ苦労しているのか,そういう話に彼らは興味を示さない。まして,メディアの役割などということはどうでもよく,ページビューを上げるためのSEO(サーチエンジン対策)だとか,ソーシャルマーケティングだとかを,熱く語る。
そういう話のなかで,たまたまこちらがテクニカルターム(専門用語)を知らないと,彼らの語りはさらに熱くなる。
山田順 (2011). 出版大崩壊:電子書籍の罠 文藝春秋 pp.176
PR