紙の新刊本の場合,コストには,大まかにいって編集費,印刷・製本代,流通経費,販売経費,著者印税(だいたい10%)がある。出版社はこのうち,流通,販売以外のすべての経費を本の定価の60〜70%に設定し,制作した本を流通業者である取次に卸す。つまり,本の定価から見ると,著者の取り分(印税)が10%,取次がおよそ20%,書店がおよそ10%となっていて,出版ビジネスは残りの60%をどうやりくりして利益を上げるかということになっている。
ところが,電子出版の場合,印刷・製本代がいらなくなる。取次も書店も通さないから流通・販売経費もいらなくなる。これは一見すごく有利と思えるが,アマゾンやアップルは30%を持っていくし,ほかの電子書籍販売会社は50%〜60%も持っていくところがあるので,実際は,コスト削減にはなっていない。まずここに,著者や一般の大きな誤解がある。
山田順 (2011). 出版大崩壊:電子書籍の罠 文藝春秋 pp.177
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