しかし,私に言わせてもらえば,セルフパブリッシングでやってくる未来は,単なる無秩序で,混乱した世界にすぎない。この混乱がおさまって,本当の電子書籍時代が訪れるのには,まだ時間がかかる。
セルフパブリッシングについては否定的な見方もある。それは「フラット化した世界で成功するのは,すでに作家として名前のある一部の人間だけ」「誰でも作家時代になると,コンテンツが際限なく増える。これは,ゴミが溢れるのと同じ」というものだ。
私は,こちらの否定的な見方に傾いている。それは,「ケータイ小説」がブームになったことをみれば明らかではないだろうか。あれは,もはや小説ではなく,ケータイ向きの単なるライトストーリーで,プロの編集者から見たら即ボツのゴミ作品にすぎない。
今後,セルフパブリッシングの大半を占めるのが,こうしたコンテンツになれば,本物の作品は埋没してしまう可能性が高い。
山田順 (2011). 出版大崩壊:電子書籍の罠 文藝春秋 pp.195-196
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