ルイ・ヴィトンは,フランスの大物実業家ベルナール・アルノーが指揮をとるLVMH(モエ ヘネシー・ルイ ヴィトン)という名称の複合企業の基幹ブランドである。2005年,LVMHにはモエ・エ・シャンドン,ジヴァンシー,タグ・ホイヤーなど50以上のブランドがあり,従業員数は5万9000人,総計1700店舗を展開し,売上高は181億ドル,純益は35億ドルにのぼる。基幹ブランド,ルイ・ヴィトンの年間売上高は推計37億2000万ドル,グループ全体のほぼ5分の1を占める。
ヴィトンは高級ブランド業界におけるマクドナルドだ。業界を先頭切って引っ張るリーダー的企業であり,莫大な売上げを誇り,世界各地の集客力のある観光地のほぼすべてに出店していて——たいていマクドナルドがすぐ近くにある——LVのロゴは黄色いMの文字と同じくらい高い認知度を誇る。
「高級ブランドはあらゆる年齢層,人種,地域を超えて普及しています」とはLVMH経営陣の1人,ダニエル・ピエットが1997年に『フォーブス』に語った言葉だ。「我々は高級ブランド市場の照準を,富裕層に限定することなく,はるかに大規模に拡大したのです」
ダナ・トーマス 実川元子(訳) (2009). 堕落する高級ブランド 講談社 pp. 23
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