レザー製品メーカーはブランドを——つまり自社のバッグを——もっと広く一般受けさせるために,既製品のラインを立ち上げた。ファッション・メーカーはバッグを最前線に押し出し,急激に刺激的になっていった広告の目玉的存在にした。バッグは消費者をブランドの虜にするための“囮”的アイテムになったのだ。
その結果,世の女性たちは見事に囮に引っかかり,中には危ないほどはまってしまう人たちも出てきた。まえがきでも書いたように,日本にはルイ・ヴィトン,シャネルやエルメスのバッグを買うために売春をする少女もいる。2005年9月,ハリケーン・カトリーナの被災者に生活必需品を買うようにと,赤十字からデビットカードが渡された。だが,そのカードを使って,アトランタにあるルイ・ヴィトンの店で800ドルのバッグを購入した人たちがいた(このニュースが報じられるや,ヴィトンの幹部は販売員に赤十字のカードでの支払いを拒否するように指示し,すでに販売された商品の代金を赤十字に払い戻している)。デザイナーズブランドのバッグを短期間だけ貸し出すサービスを展開しているサイトもある——これを利用すれば,毎シーズン購入しなくても,バッグをもっと頻繁にとっかえひっかえすることができるというわけだ。
ダナ・トーマス 実川元子(訳) (2009). 堕落する高級ブランド 講談社 pp. 176-177
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