“伝統の職人技”なるものも複雑だ。私は中国人の若い女性が,むずかしいとされる作業——レザーを編んで持ち手とタッセルをつくっている様子——を見学した。「この技術はイタリアから学びました」と工場主は私に言った。バッグをつくるのに使用される接着剤の量によって,高級度のランクと小売価格が決まる。低ランクの高級ブランドは大量の接着剤を使う。ランクが高くなるほど少なくなる。ある新興の,高く評価されているヨーロッパのブランドは,接着剤をいっさい使わずに非常に質のいいレザーグズをつくっている——だが,そのブランドの大半の製品もこっそりと中国で生産されているのが実態だ。生産されている部屋に入ると,レザーのにおいしかしない。「接着剤が大嫌いなんです」工場主は言った。「だけど接着剤なしではブランドものは利益が出ないんですよ」
そうやって高級ブランドは収益をあげているわけだ。
ダナ・トーマス 実川元子(訳) (2009). 堕落する高級ブランド 講談社 pp. 213
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