こうした状況の中で,クラスで本当に「こいつは信頼できるな」とか,「この子といると楽しいな」という気の合う仲間とか親友というものと出会えるということがあれば,それはじつは,すごくラッキーなことなのです。そういう友だちを作ったりで会えたりすることは当然なのではなくて,「とてもラッキーなこと」だと思っていたほうが良いことは多いような気がします。
そういう偶然の関係の集合体の中では,当然のことですが,気の合わない人間,あまり自分が好ましいと思わない人間とも出会います。そんな時に,そういう人たちとも「並存」「共存」できることが大切なのです。
そのためには,「気に入らない相手とも,お互い傷つけあわない形で,ともに時間と空間をとりあえず共有できる作法」を身につける以外にないのです。大人は意識的に「傷つけあわず共存することがまず大事なんだよ」と子どもたちに教えるべきです。そこを子どもたちに教育していかないと,先生方のこれからのクラス運営はますます難しくなると思います。「みんな仲良く」という理念も確かに必要かもしれませんが,「気の合わない人と並存する」作法を教えることこそ,今の現実に即して新たに求められている教育だということです。
菅野 仁 (2008). 友だち幻想 人と人の<つながり>を考える 筑摩書房 pp.69-70.
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