裁判に疎かったぼくは,まったく知らなかったのだが,民事の場合,裁判費用は,各自が払うものなのだ。そして,その裁判や和解で,かかった裁判費用を払えと相手にいっても,それはできないものらしい。
ぼくはもう200万円も使ったのに,回収の方法はないんですか,と聞くと,それを相手から取るには,また今闘っている裁判とは違う裁判を起こさなくてはいけない,裁判費用を払えという裁判を起こさなくてはいけないと教えてくれた。こちらが勝ったんだから,負けたそちらが裁判にかかった費用を払えという裁判である。ただ,それも非常に長い時間がかかる場合が多いし,全額が回収でいるとは限らないということだった。
それは,とてつもなく面倒臭い。裁判ひとつでも人生の大イベントなのに,もうひとつ新たに抱えろなんて,その上,全額戻らないかもしれないなんて。裁判費用は災難だと思って諦めろといっているも同然ではないか。
つまり,不思議な話なのだが,裁判は起こされ損なのだ。金銭的余裕があるほうが,圧倒的に有利だということなのだ。
いしかわじゅん (2003). 鉄槌! 角川書店 pp.239-240
PR