昨今の学歴社会は,親の学歴がこのように著しく高まってきたという点で,「子どもは親より学歴が高くなる(する)のは当たり前」と考えてきた昭和の学歴社会とは,まさに隔世の感があります。しかも,先ほどのアメリカとの比較からわかるように,国際的に見渡しても,親世代のこれほど高い教育水準を背景にして大学受験がなされている社会は,そう多くはありません。
ところが,高い学歴水準にある親たちを人生のスタート・ラインにしているにもかかわらず,いまの子どもたちをみると,18歳の進路選択時になんと2人に1人が大学・短大進学を希望していないのです。ここからわたしたちは,昭和の日本人を駆動していた「子どもは親より学歴が高くなる(する)のは当たり前」という学歴や受験に対する心構えが,現在では少なからぬ親において失われていることを知ることができます。実際,いま日本人の7割は,親が高卒ならば子も高卒,親が大卒ならば子も大卒というように,親と同じ学歴を得るようになっています。わたしたちの社会は,だれもが競い合うようにしてどんどん高学歴化していく段階を脱してしまったのです。むしろわたしたちはいま,学歴競争・受験競争の過熱状態ではなく,学歴に対して少し冷めた構えをもっているということができるでしょう。
吉川 徹 (2009). 学歴分断社会 筑摩書房 pp.20-21
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