学歴と学校歴の違いについて,まず確認しておきたいのは次のことです。最近,以前ほど「学歴」は重要ではなくなっている,あるいは「学歴」よりも実力で出世が決まる時代になった,などといわれることがあります。そこでいわれている内容をよくみると,どうやらこれらは,学歴ではなく学校歴にかんする時代の変化を指摘するもののようです。つまり,ランクが高くない大学を出ていても,その後の職歴においていくらでも逆転可能になってきた,一流大学を出ているだけでは成功は約束されない社会になっている,ということです。大卒層のなかで,学校歴の序列が以前のように厳密なものではなく,少し弛んできたということは,私もおそらく事実だろうとみています。
ただし,それはあくまで学校歴(大学名)についての変化であって,高卒でも大卒層を逆転することができる社会になったということではありません。それどころか,学歴分断線が無効化しているという話は,いまだかつて聞いたことがありません。この点について誤解して「学歴なんて関係なくなった」と思っている人があれば,考えを改めるべきでしょう。
吉川 徹 (2009). 学歴分断社会 筑摩書房 pp.43-44
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