がん細胞の分裂・増殖スピードは,最初は速い。0.6ヵ月から2ヵ月ごとに細胞分裂を繰り返して,急速に増えていく。その時期(最初期)が,1年から4年くらい続く。その間に細胞分裂を23回行って,細胞数も1千万個になる。そのころの胃がんは直径0.2センチで,肉眼で見えるかどうかである。その後,細胞分裂のスピードは遅くなり,2年から3年かけて細胞分裂を繰り返していく。その時期(初期)が14年から21年続いて,30回目の細胞分裂を迎える。この時,がん細胞は10億個(直径1センチ,重量1グラム)に達し,胃がん検診で早期発見可能なレベルとなる。たった1個のがん細胞が分裂・増殖を繰り返して発見可能なレベルになるまで,何と20年前後が経っているのである。そこから細胞分裂のスピードは速くなり,2ヵ月から10ヵ月ごとに細胞分裂を繰り返すのだが,もう余裕はない。あと10回,細胞分裂を繰り返すと,細胞数は1兆個(直径10センチ,重要1キロ)となり,人はがんで死ぬ。
辻 一郎 (2010). 病気になりやすい「性格」:5万人調査からの報告 朝日新聞出版 pp.141-142
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