そもそも,クラス全員が仲良くできる,全員が気の合う仲間同士であるということは,現実的に不可能に近いことです。人間ですから,どうしてもお互い馬が合わない人,理屈ぬきに気に障る人というのはいます。大人だって,ほとんどの人は何かしら人間関係の悩みを持っています。
そんなとき,ムカツクからといって攻撃すれば,ますますストレス過剰な環境を作り,自分のリスクも大きくすることになるのです。
だからこそ第3章で強調した「並存性」という考え方が大事なのです。ちょっとムカツクなと思ったら,お互いの存在を見ないようにするとか,同じ空間にいてもなるべくお互い距離を置くということしかないと思います。
ただし,露骨に”シカト”の態度を誇示するのも,攻撃と同じ意味を帯びてしまうことになります。朝,廊下や教室で会って目があったりしたら,最低限の「あいさつ」だけは欠かさないようにしましょう。あくまでも自然に”敬遠”するというつもりでやってください。
要は「親しさか,敵対か」の二者択一ではなく,態度保留という真ん中の道を選ぶということです。
菅野 仁 (2008). 友だち幻想 人と人の<つながり>を考える 筑摩書房 pp.91-92.
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