ヒツジは直接食糧にするためと経済的に利用するために紀元前8000年前後に家畜化された。コムギとオオムギが栽培品種化される数百年前のことだ。ヤギはほぼ同じ頃にイラン西部のザグロス山脈で家畜化された。最初期の作物の種は家畜の飼料を栽培するために集められた可能性がある。
ウシはギリシアまたはバルカン諸国で紀元前6000年ごろに初めて家畜化され,中東とヨーロッパに急速に広まった。農業と畜産の革命的な融合は,成長中だったメソポタミアの農耕文明にウシが届いたときに始まった。鋤が発達すると,ウシは農地で働き,肥料を与えた。動物の労働力を動員すると農業生産性は高まり,人口は飛躍的に増大した。家畜の労働力のおかげで,農業人口の一部は野良仕事から解放された。
作物生産と畜産の同時発達は,互いに補強しあい,共に食料生産の増加を可能にした。ヒツジとウシは植物の人間が食べられない部分を乳や肉に変える。家畜は労働力によって収穫を増やすだけではない。その糞尿は肥料として,作物が吸い上げた土壌の養分を補充するのに役立つ。増収分の作物はさらに多くの動物を養い,より多くの肥料が生みだされ,また収量が増加してより多くの人々を養う。ウシの力を利用すれば,一人の農民が家族を養うのに必要な以上の食糧を生産できる。鋤の発明は文明に革命をもたらし,地球の表面を変貌させた。
デイビッド・モンゴメリー 片岡夏実(訳) (2010). 土の文明史:ローマ帝国,マヤ文明を滅ぼし,米国,中国を衰退させる土の話 築地書館 pp.45-46
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